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大阪地方裁判所 平成7年(ワ)10310号 判決 1998年1月29日

原告

大坪八千代

被告

清水功

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金五一四万七一八六円及びこれに対する平成四年二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、各自金九三九万〇六九七円及びこれに対する平成四年二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が運転する原動機付自転車と被告清水功が運転する被告大垣稔彦所有の普通貨物自動車とが衝突し、原告が負傷した事故につき、原告が被告清水功に対しては、民法七〇九条に基づき、被告大垣稔彦に対しては、自賠法三条に基づき、それぞれ損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等(証拠により比較的容易に認められる事実を含む。)

1  事故の発生

左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

日時 平成四年二月一七日午前八時四五分頃

場所 大阪市東淀川区豊新五丁目六番一四号先交差点(以下「本件交差点」という。)付近

事故車両一 普通貨物自動車(なにわ四〇の九八九八)(以下「被告車両」という。)

右運転者 被告清水功(以下「被告清水」という。)

右所有者 被告大垣稔彦(以下「被告大垣」という。)

事故車両二 原動機付自転車 (大阪市東淀川ち一九八三)(以下「原告車両」という。)

態様 左折中の被告車両と直進中の原告車両とが衝突した。

2  被告大垣の責任原因

被告大垣は、被告車両の所有者であり、運行供用者である。

3  損害の填補 合計一七九万二三五二円

原告は、本件事故に関し、被告らから、七六万八九五九円の外、次の治療費の支払を受けている(大阪厚生年金病院分につき、甲三〇2、三一2、弁論の全趣旨)。

医誠会病院 六三万七九〇〇円

行岡病院 三四万八一〇〇円

大阪厚生年金病院 三万七三九三円

4  被告大垣の選任監督上の過失の不存在

被告大垣は、被告清水の選任・監督につき注意を怠らなかった(弁論の全趣旨)。

5  被告車両の構造上の欠陥等の不存在

本件事故当時、被告車両には、構造上の欠陥や機能障害はなかった(弁論の全趣旨)。

二  争点

1  被告清水の過失の有無

(原告の主張)

本件事故は、原告車両が直進していたところ、右車両と並進していた被告車両が本件交差点を左折進行した結果、原告車両を巻き込み接触したものであって、被告清水の左方ないしその後方の安全確認義務等の違反により生じたものである。

(被告らの主張)

本件事故は、被告車両が本件交差点で左折中に原告が後方から直進してきて右車両の後方の荷台に追突したものであり、被告清水に過失はない。

2  原告の過失の有無

(被告らの主張)

争点1において述べたとおり、本件事故は、被告車両が本件交差点で左折中に原告が後方から直進してきて右車両の後方の荷台に追突したものであり、原告の一方的な過失によるものである。

(原告の主張)

争点1において述べたとおり、本件事故は、いわゆる巻き込み事故であり、原告による追突ではなく、原告に過失はない。仮に原告に過失があるとしても、過失割合は一割を超えるものではない。

3  原告の傷病・治療経過

4  原告の損害額

(原告の主張)

(一) 治療費 一一五万八六五三円

自己負担分 一三万五二六〇円

被告ら主張の既払分 一〇二万三三九三円

(二) 入院雑費 一万三〇〇〇円

(三) 通院交通費 一六万八三六〇円

(四) 休業損害 四三七万一〇三八円

(五) 逸失利益 二一一万〇二七九円

(六) 入通院慰謝料 一二九万〇五七〇円

(七) 後遺障害慰謝料 二二〇万円

(八) 弁護士費用 九〇万円

(被告らの主張)

不知。

5  素因減額

(被告らの主張)

原告にみられる頸椎椎間板ヘルニアは、本件事故によるものではなく、既存の経年性の椎間板変性によるものである。原告主張の後遺障害は経年性の頸椎椎間板変性に本件事故が作用して生じたものであるから、右既往症の寄与率は七〇ないし八〇パーセントを下らない。

(原告の主張)

原告に加齢性の素因があったとしても、これは疾患というべきではなく、いわゆる素因減額の理由となるものではない。

第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む。)

一  争点1及び2について(本件事故の態様)

1  前記争いのない事実、証拠(乙一、被告清水本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、大阪市東淀川区豊新五丁目六番一四号先交差点付近であり、その概況は別紙図面記載のとおりである。本件交差点は、ほぼ南北方向の道路(以下「南北道路」という。)と東西方向の道路(以下「東西道路」という。)とが交わる交差点であるが、その形状は、五叉路となっている。南北道路は、片側二車線であり、その幅員は第一車線は三・二メートル、第二車線は三・三メートルであり、制限速度は時速六〇キロメートルと指定されていた。南北道路は本件交差点を境に別紙図面のとおり若干折れ曲がった形となっている。本件交差点の西方に被告清水の勤務していた月光園という花屋がある。

被告清水は、平成四年二月一七日午前八時四五分頃、被告車両を運転し、南北道路の北行車線(第一車線)を時速約四〇キロメートルで走行し、月光園に行くため、本件交差点手前三〇メートル付近から減速し始め、別紙図面<1>地点においてさらに減速し、左サイドミラーによって左後方の安全を確認して、同図面<2>地点においてハンドルを左に切り始め、左折を開始したところ、同図面<×>地点において被告車両のやや後方(真後ろよりも左寄り)を直進進行してきた原告車両が被告車両の左側後部付近に衝突し(衝突時の被告車両の位置は同図面<3>地点、原告車両の位置は同図面<ア>地点)、原告車両は同図面<イ>地点に転倒し、被告車両は同図面<4>地点に停止した。被告車両は保冷車であり、車両の真後ろは確認できず、左サイドミラーによる視界は、別紙視界検査見取図記載のとおりである。

以上のとおり認められる。原告は、原告車両が被告車両と並進していたところ、被告車両が本件交差点を左折進行した結果、原告車両を巻き込み接触したものであると主張し、甲第三四号証及び原告本人尋問における供述中にはこれに沿う部分がある。しかしながら、仮に本件事故態様が原告の右主張のようなものであるとすれば、原告車両は被告車両の左側前部ないし中部あたりで衝突すると考えられるところ、前認定のとおり被告車両の衝突部位は左側後部付近であるから、右書証及び供述は措信しえない。また、被告らは、本件交差点三〇メートル手前あたりから左折の指示器を出したと主張するが、乙第一号証(実況見分調書)における指示説明(別紙図面<1>地点で出したとする。)に照らすと、少なくとも同図面<1>地点以前に左折の指示器を出してはいないと認められる。他に前認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右認定事実によれば、本件事故は、被告清水が本件交差点を左折するにあたり、後方から進行してくる車両の有無・動静に対する注意を続け、安全を確認しながら進行すべき注意義務があったにもかかわらず、これを十分に尽くすことなく進行した過失のために起きたものであると認められる(したがって、被告大垣が主張する自賠法三条の責任の免責は認められない。)。しかも、被告車両は、本件交差点を過ぎると南北道路がやや右方に曲っていることに影響されたためか、前記のとおり、別紙図面<1>地点、<2>地点、<3>地点、<4>地点と若干外側に膨らんだ形で左折していること、被告車両は左折前に予め左端に寄ることなく、交差点の側端に沿って走行していないことにかんがみると、被告清水の過失責任は重いといわざるを得ない。しかしながら、その反面において、原告としても、交差点手前で減速状態となっている車両のやや後方(真後ろよりも左寄り)を走行して交差点内に進入する以上、同車両の動静につき一定の注意を払いつつ進行することが期待されたというべきであるところ、前記事故態様によれば原告にも被告車両の進行について注意を欠く点があったことは否定できない。したがって、本件においては、一切の事情を斟酌し、原告の損害につき、二〇パーセントの過失相殺を行うのが相当である。

二  争点3ないし5について(原告の傷病・治療経過、原告の損害額、素因減額)

1  原告の傷病・治療経過

証拠(甲二、四1、五1、六1、七1、八1、九1、一〇1、一一1、一四1、一五1、一六1、一七1、一八1、一九1、二〇1、二一1、二二1、二三1、二四1、二五1、二六1、二七1、二八1、二九1、三〇1、三一1、三二ないし三四、三六1ないし3、乙二ないし七、一〇、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告(昭和二六年三月二日生)は、本件事故当時、主婦業の傍らパートタイムで大阪資生堂株式会社に勤務し、化粧品の荷詰の仕事に従事していた。本件事故前、右主婦業及びパート業の上で特段支障となるものはなかった。本件事故は、原告が自宅から右勤務先へ行く途中に起きたものである。

原告は、本件事故当日の平成四年二月一七日、医誠会病院にて受診し、頭部外傷Ⅰ型、顔面打撲、臀部打撲、骨盤打撲、右肘打撲、右足関節打撲、左下肢・右大腿打撲、頸椎捻挫の傷病名で、診療が開始されたが、初診時の頭部、骨盤、仙骨、右肘、左足関節のX線写真ではいずれも異常は認められず、翌日の頸椎のX線写真でも異常は認められず、頸部痛があるが、上肢のしびれはなく、指の微細運動は良好であった。その後も、原告は、頭痛、頸部痛、右肩痛、腰痛等を訴え、同年二月二八日、脳外科を受診したが、神経学的所見としては、運動神経脱落症状なく、CT上も異常なく、脳に心配はないであろうと診断された。同日から理学療法が開始され、同年三月一二日からは頸椎牽引も開始されたが、同月一九日のジャクソンテストはマイナスであり、同月二三日に実施されたMRI検査の結果は、第五、第六頸椎間、第六、第七頸椎間に変形性脊椎症性変化及び椎間板ヘルニアの印象ありと報告された。同年四月九日のジャクソンテスト、スパーリングテストはいずれもマイナスであったが、同月一五日のスパーリングテストは右がプラスであった。その後も、頭痛、右頸部痛、腰痛等を繰り返し訴え、同年七月四日からは腰椎牽引も開始されたが、同年九月五日には症状固定に近いと診断され、同月一〇日まで通院した(実通院日数一六〇日)。

(二) その後、原告は、平成四年九月一一日から行岡病院に転医し、外傷性頸腕症侯群、腰部捻挫の傷病名で通院を開始し、右手のしびれ感を訴え始め、その外、右前腕から肩のしびれ感、放散痛を訴え、右第六、第七頸神経根障害と診断された。翌日から理学療法(簡単)が開始されたが、同年一二月二五日には左手から前腕尺側しびれ感を訴え、平成五年一月八日にはしびれ感は左手のみであるとされ、同年二月一六日に大野記念病院にて実施されたMRI検査の結果は、第五、第六頸椎間左側に椎間板突出がみられ、脊髄をやや圧迫していると報告された。同月一九日における上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射は右左ともに異常はなく、ワルテンベルグ反射はマイナスであり、その後もこれらの反射は概ね正常であり、同年九月六日には、再度大野記念病院にてMRI検査が実施されたが、第五、第六頸椎間及び第六、第七頸椎間に椎間板突出がみられると報告された。同年九月一三日から同月一六日まで四日間、筋電図、脊髄造影検査等のため検査入院となった。同年一〇月一四日の徒手筋力テスト(上肢、下肢)に関し、担当者から、テストを進行していくにつれて上下肢ともに痛みが増強し、運動不可となり、力を入れさせるとのどがつまると言われる、テスト以外の動作を見ていると可能な運動でもテストになると不可能となることもあり、今回のテストの信頼性もわからない旨の報告がされている。後記症状固定日までの実通院日数は二九二日である。

(三) この間、原告は、行岡病院で頸椎椎間板ヘルニアを指摘され、手術を念頭に大阪厚生年金病院を紹介されたため、平成五年二月二六日、同病院の診察を受け、同年三月二五日から同月三〇日まで六日間入院した(実通院日数一日)。主訴は、両手のしびれと痛み、喉の圧迫感、咳、腰痛であった。同病院の医師によると、原告の症状は多彩で身体検査ではよくわからないが、ただ、右橈骨筋反射の低下は認められるとされた。同月二六日実施の脊髄造影検査で、第六、第七頸椎間に不完全ブロックが認められたが、脊髄の圧迫軽度であり、また、CT脊髄造影検査で、第五、第六頸椎間の左に椎間板髄核ヘルニアが認められ、両上肢のしびれと痛みはこのヘルニアによるものと思われるが、前頸部の異和感、咳などはヘルニアによるものではないとされた。そして、神経学的所見と脊髄造影の所見とが一致しないと思われるから、当該時点では手術適応なしと診断され、退院となった。

(四) また、原告は、行岡病院から紹介され、関西労災病院にも、平成五年一〇月一八日と同年一一月一八日に通院し(実通院日数二日)、さらに、行岡病院から頸部硬膜外ブロック目的で紹介された大阪大学医学部附属病院にも、同年一二月八日から平成六年二月九日まで通院したが(後記症状固定日までの実通院日数六日)、頸部硬膜外ブロックの効果はあまりなかった。

(五) 右の外、原告は、佐々木整骨院に、平成四年六月一七日から同年八月二六日まで通院した。

(六) 行岡病院の速水医師は、平成六年三月三一日をもって原告の症状が固定した旨の診断書を作成した。同診断書によれば、自覚的には、頸部痛、腰部痛があり、他覚症状及び検査結果としては、神経学的には右第六、第七頸椎神経領域の知覚鈍麻あり、MRIにて第五、第六頸椎間の椎間板ヘルニア軽度あり、X―P上第五、第六頸椎に後方骨棘ありとされている。

(七) 自算会調査事務所は、原告の後遺障害につき、一四級一〇号に該当する旨の認定を行った。

以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  症状固定時期、後遺障害等級

右事実を総合すれば、本件事故を原因とする外傷によって生じた原告の症状は、平成六年三月三一日に固定し、その後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表上、一二級一二号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するものというべきである。

この点、被告らは、頸椎椎間板ヘルニアは本件事故によって生じたものではなく、本件事故による原告の症状は平成四年九月一〇日頃には固定していると主張する。しかしながら、本件事故前には原告は特に支障を感ずることなく化粧品の荷詰の仕事に従事していたこと、原告は本件事故により転倒して路面に頭部等を打ったものであること等前認定事実に照らすと、原告の症状は経年性の頸椎椎間板変性に本件事故の影響が加わって生じたものとみるべきであるし、原告の症状の推移及び治療経過に照らすと、その症状固定時期は前認定のとおり認めるのが相当であるから、被告らの右主張を採用することはできない。

また、被告らは、原告の後遺障害は一四級一〇号(局部に神経症状を残すもの)を越えるものではないと主張するが、原告には椎間板ヘルニアが認められること、両上肢のしびれと痛みはこれを原因とするものであること、両上肢のしびれと痛みが長期にわたって持続していることに照らすと、被告らの右主張も採用することはできない。

3  素因減額

被告らは、原告の後遺障害は経年性の頸椎椎間板変性に本件事故が作用して生じたものであるとして素因減額を主張するが、前認定事実によれば、右変性は加齢に伴って当然にその存在が予定されている程度のものであると認められるから、これを損害賠償の額を定めるにつき斟酌することは相当ではない。したがって、被告らの右主張を採用することはできない。

4  原告の損害額(過失相殺前)

(一) 治療費 一一二万五六五三円

原告は、本件事故による傷病の治療費(文書費を含む)として、次のものを要したと認められる。

(1) 自己負担分 一〇万二二六〇円

医誠会病院(甲三七) 一〇三〇円

行岡病院(甲三八1ないし57) 四万五五六〇円

大阪厚生年金病院(甲三五) 五三九〇円

大野記念病院(甲三九1、2) 二万〇七〇〇円

関西労災病院(甲四一1、2) 一〇〇〇円

大阪大学医学部附属病院(甲四〇1ないし6) 二万八五八〇円

なお、佐々木整骨院の治療費については、本件事故と相当因果関係あるものと認めるに足りる証拠はない。

(2) 既払分 一〇二万三三九三円

医誠会病院(前記争いのない事実等) 六三万七九〇〇円

行岡病院(前記争いのない事実等) 三四万八一〇〇円

大阪厚生年金病院(前記争いのない事実等) 三万七三九三円

(二) 入院雑費 一万三〇〇〇円

原告は、前認定によれば、行岡病院及び大阪厚生年金病院に合計一〇日間入院したから、右期間の入院雑費として合計一万三〇〇〇円(一日あたり一三〇〇円)を要したと認められる。

(三) 通院交通費 一六万六六八〇円

原告は、通院交通費として、次のものを要したと認められる(前認定事実、弁論の全趣旨)。

医誠会病院 五万一二〇〇円

行岡病院 一〇万五一二〇円

大阪厚生年金病院 六四〇円

大野記念病院 一五六〇円

関西労災病院 二四〇〇円

大阪大学医学部附属病院 五七六〇円

なお、佐々木整骨院の通院交通費については、本件事故と相当因果関係あるものと認めるに足りる証拠はない。

(四) 休業損害 二一四万五七八二円

前認定の原告の症状及び治療状況等にかんがみると、原告は、平成四年二月一七日から平成六年三月三一日まで七七四日間につき、平均してその労働能力が三〇パーセント制限される状態であったと認めるのが相当である。

本件事故当時における原告の家事労働その他の労働の対価は、年額三三七万三〇〇〇円に相当するものと認められるから(弁論の全趣旨)、これを基礎として右休業期間中の休業損害を計算すると、次の計算式のとおりとなる。

(計算式) 3,373,000×0.3×774/365=2,145,782

(一円未満切捨て)

(五) 逸失利益 一七二万三三〇八円

前認定事実によれば、原告の後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表一二級に該当し、原告は、右後遺障害により、その労働能力の一四パーセントを症状固定時から四年間喪失したものと認められる。

症状固定時における原告の家事労働その他の労働の対価は、年額三四五万三八〇〇円に相当すると認められるから(弁論の全趣旨)、右金額を基礎に、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、後遺障害による逸失利益を算出すると、次の計算式のとおりになる。

(計算式) 3,453,800×0.14×3.564=1,723,308

(一円未満切捨て)

(六) 入通院慰謝料 八〇万円

原告の被った傷害の部位・程度、治療状況等の事情を考慮すると、右慰謝料は八〇万円が相当である。

(七) 後遺障害慰謝料 二二〇万円

原告の後遺障害の内容及び程度を考慮すると、右慰謝料は、二二〇万円が相当である。

5  過失相殺後の金額 六五三万九五三八円

以上掲げた原告の損害額の合計は、八一七万四四二三円であるところ、前記一の次第でその二〇パーセントを控除すると、六五三万九五三八円(一円未満切捨て)となる。

6  損害の填補分を控除後の金額 四七四万七一八六円

前記争いのない事実等のとおり、原告は、本件交通事故に関し、合計一七九万二三五二円の支払を受けているから、これを過失相殺後の損害金額六五三万九五三八円から控除すると、残額は四七四万七一八六円となる。

7  弁護士費用 四〇万円

本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告の弁護士費用は四〇万円を相当と認める。

8  まとめ

よって、原告の損害賠償請求権の元本金額は五一四万七一八六円となる。

三  結論

以上の次第で、原告の被告ら各自に対する請求は、五一四万七一八六円及びこれに対する本件不法行為日である平成四年二月一七日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

別紙図面

別紙図面 視界検査見取図

左サイドミラー視界検査

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